ライフワークには何度も出会い直すもの。映画『過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい – 写真家森山大道』を観た話。

こんにちは、寺おかです。
ほっこりイラストとしっかりデザインで
個人ビジネスのお手伝いなどをしています。

さて、今日は映画をみて感じたことを。

映画
『過去はいつも新しく、
　未来はつねに懐かしい
　写真家森山大道』
2021年5月〜全国順次公開中

https://daido-documentary2020.com/

※渋谷パルコの８階で、展示『はじめての森山大道。』とともに開催中です（2021/6/2現在）

写真家・森山大道さんのドキュメンタリー映画。

森山大道と言えばもはや生けるレジェンド、
世界中の美術館から展覧会のオファーが絶えない写真家。
私も学生時代からずっとファンです。

冒頭のイラストは、
カメラを携え街を歩く森山さんのお姿を
記憶スケッチしたもの。
軽やかで素敵だったなあ＾＾

ここからはネタバレになる内容を含みますので、
気になる方は映画を見た後に読んでくださいね。

（ということで、少しスペースをあけて…）

映画は森山さんの強烈なデビュー写真集、
『にっぽん劇場写真帖』（1968）
を2020年に再出版した顛末を軸に綴られています。

森山さんの言葉や普段の撮影スタイル、
写真集づくりの編集や造本に関わる人々、
森山さんをめぐる世の中の様子。

これらを丁寧に追い、みせてくれる映画です。　

※こちらの記事もオススメ。本作を撮った岩間玄監督のコメントが読めます。
　→ いつの時代も色あせない森山大道という伝説。

私が知れて一番よかったのは、
森山さんが制作を休止していた頃のお話。

革新的な写真の世界を確立した後、
しばらく写真が撮れなくなったのだそう。

だけど、そのころが一番
写真のことを考えて向き合っていた
と森山さんは言います。

「写真に出会いなおす。
何度も写真に出会うんだよね。」

そして、状況を突破するきっかけが
写真の祖・ニエプスの撮った写真。

写真のお手前を壊しながら
新しい写真表現を構築した森山さんが
たどり着いたのが、

何時間もの時間をかけて写し撮られた
「人類最初の写真」なんです。

これは今も心の支えだそうで、
寝室に常に飾ってあるんですって。

そんな森山さんは現在
デジタルのコンパクトカメラを使って
自由に写真を撮り続けています。

この経緯を知って、なんだか涙が出てきました。

ここに出すのはおこがましい話だけど、
私にもそんな経験があったから。

10年くらい描けない時期があって
とても苦しかったんです。

それを抜け出すきっかけが
古典と言われる作品でした。

近代〜現代の絵ばっかり観て
学んできた私なのに、です。

そして今はデジタル着彩のイラストも
描くようになりました。

森山さんのような方にもそんな経験があって、
立ち直ったり、心の拠り所を持ちながら
今を生きている。

デジタル化の流れで
フィルム写真を撮り続けることは困難に。

森山さんにも愛用の道具があったそうですが、
製造中止で無くなってしまった。

だから、そこは実用的に
さっとデジタルカメラでの撮影に切り替えて
今に至るそうです。

そのように生きている森山さんの
なんと静かで清々しく、力強いことか。

真のライフワークって何度も出会い直す。
いっとき休止するようなことがあっても、
スタイルが変わっても、必ずです。

とても心を揺さぶられ、励みになりました。

また、映画を観ながら感動とともに、
私自身のことを思い返しもしました。

「とは言え私はそれほど
絵に向き合った時間と言えるのか？？
いや、逃げ逃げのヘコヘコで
そんなかっこいいもんじゃなかった〜〜」

みたいなね、
かっこ悪い自分を改めて思い知ったり、

「でもでも！ようやく
向き合えるような私になって来ている。
だから、たゆまず日々描いていこう。」

という希望と爽やかな風を
噛み締めたり。

自分の光と影を見つめ直したのでした。

映画をはじめ様々な作品鑑賞って、
自分の写し鏡を突きつけられるような
ところがありますよね。

力のある作品ほどそうだと思います。

もちろんそれだけじゃなくて、

森山さんのこと、カメラや機材のこと。
朋友、故・中平卓馬さんとのこと。
紙の本作りの大変さ、素晴らしさ、
ものづくりをする人々のひたむきさ…

たっぷり味わえてとても贅沢な時間でした。

ああ、観られて本当に良かった！！

とても嬉しく熱い気持ちで映画館を後にしました＾＾