胸を張って孤独でいよう。
月に吠えよ、萩原朔太郎展(世田谷文学館)を観た話。
こんにちは、イラストレーターの寺おかです。
今日は展覧会レビューと思ったことを。
先日、こちらの展覧会に行きました。
月に吠えよ、萩原朔太郎展
世田谷文学館
2022年10月1日(土)~2023年2月5日(日)
https://www.setabun.or.jp/exhibition/20221001_sakutarohagiwara.html
明治から昭和を生きた詩人、
萩原朔太郎の没後80年記念の展示です。
”本展では、朔太郎の生涯と遺された資料、
さらにその孤独な世界を新しい形で表現した
現代のアーティストたちの作品などを、
一冊の「本」を読み進めるように辿っていきます。”
(展覧会サイトから引用)
みなさんは萩原朔太郎について
どのくらいご存知ですか?
私はほぼ知らなかったです。
国語の授業で習った、
口語体の詩がちょっと印象的だった…
くらいですね。
今回は、
私の好きなスペース(世田谷文学館)で
面白そうな展覧会があるので、
いい機会だし知りたいな〜
ということで行ってみました^^
インスタレーションのような会場演出と、
いくつか設置されたハンズオン展示で
とても面白かったです。
この設えのおかげで
とても楽しく、興味深く
萩原朔太郎の作品世界や生涯を味わえました。
萩原作品にインスパイアされた
松本大洋さんなど現代の作家の作品もあって、
とても見応えがありましたよ^^
テーマが文学の世界なので、
基本、文字ベースの展示です。
グラフィックをたくさん楽しみたい方や
小さなお子さんには不向きかな。
まるで文字が、原稿用紙とインクが、
降ってくるような空間。
本や音楽で言葉に目覚めた
ティーン以上の、
大人のための展覧会だと思います。
さてさて、ここからは私の個人的な感想です。
長いよ(笑)
前述の通り、とても素晴らしくて
面白い展示を存分に楽しんだのですが…
展示された萩原朔太郎の言葉たちを読みながら、
私はものすごく胸がザワザワしました。
なぜなら、そこに綴られた「孤独」が
私にとって全然他人事ではなかったから。
社会生活を送っていく上で、
見ないように、気づかないようにしているところ。
でも、そういう感情や思考が
自分の中にもある…と
本当はわかってる、黒いところ。
これだけでも、
まるで胸をえぐられるような、
自分にぽっかり空いた穴が
どれだけ大きいのか、
とか思い知らされるような感じなのですが、
さらに波状反応で、
100年以上前の人が綴ってることと
ほぼ同じことを思ってる自分ってマズイ…
めちゃめちゃ暗くてめんどくせぇ私…
などなど思い至ってしまい、
ずずーんと闇に飲み込まれそうになったのです。
なんか色々すごいでしょう(笑)
でもね、展示を観ながらすぐに気づきました。
「孤独は自然なことだ」と。
孤独はつらく、胸を焼かれるものです。
あと、孤独を自分で認めたり、
孤独であることを他人に悟られるのは、
なんだかみっともない感じがして
是非とも避けたいものだったりします。
それでも、孤独は悪いことじゃない。
孤独はただの状態、感じ方の1つであって
良いも悪いもないんですよね。
しかしですよ。
世の中的に、教育的に、
孤独について正直であることは難しい。
だって、そんな人は圧倒的にめんどくさいもの(笑)
私だって「オレはこんなに孤独なんだ」
という誰かの話を延々と聞かされたくはない。
だけど。
自分に生じた「孤独」と、
辛い、苦しい、恥ずかしいなどの
「それをめぐる感情」は
ごくごく自然なもの。
ただ天気のように、生理現象のように
付き合っていくだけなんですよね。
孤独をどこかに向かって投げなくてもいい。
自分にそっと付き合っていくだけ。
そのときは、淡々と
胸を張って孤独でいたらいいんだ。
ただね、このプロセスの最中は
自分だけではしんどくなる事があって、
そういう時に萩原作品は
寄り添ったり、刺激を与えてくれるんだな。
だから、近代を切り開いた文学として今も残り、
インスパイアを続けるチカラがあるんだな。
そんなことを思いました。
そして言葉、文字というものは、
こういう深い内省の局面で
とてつもない威力を発揮するんだな…とも^^
ところで、
「孤独を強く感じているのに
平気そうに頑張っていて、
本当はカツカツな気持ちなんだオイラは!」
なんて状態ってないですか?
私はあります。
そういうカツカツさで
他人を全く祝福できない!みたいな
暗黒状態というのが、時にあります(笑)
それで、人知れず
ひどく孤独を感じて凹んで、
そののち自分の中の苦労や辛さに気づき、
それをそっと手のひらに乗せて確かめると
やがて暗黒が晴れていく…
という浄化のようなプロセスを
何度も経験しています。
どうです?暗いでしょう(笑)
でもね、それが私なのでね〜。
こうやって開き直れるまで結構かかったけどね、
自分の孤独をしっかり分かって
それを確かめる勇気があるってのは、
絶対いいことだって確信していますよ^^
私にとって、この萩原朔太郎展は
こんなことを再確認させてくれる良い機会にもなりました。
さいごに。
ポスターやチケットに添えられた、
本展覧会の副題がステキなんです。
月に吠えよ、萩原朔太郎展
我々はもはや
永久に孤独ではない
そう、ずっと孤独って訳じゃない。
人が孤独を感じるのは、
これまでに誰かとつながったり
温かい気持ちを感じた事があるから。
萩原朔太郎もね、
孤独の表現ばっかりしてますけど、
書簡などをみると
温かい関係性がどこかにあったり、
チャーミングな人間性が伺えたりするんです。
そして、孤独をたたえながらも
美しい言葉、本の装丁、家具などへ
情熱を注いだ生涯でした。
私も色々言って
おおいに孤独ぶってますけど、
この展覧会はたまたま友人と一緒に行ったので
そんな気持ちを共有し合えてね、
感じたものは孤独だけではなかったんです^^
まさに光と影、
影がなければ光は生まれない。
逆もまたそう。
ちょっと光なんて思い出せないな…
なんて感じられる時があっても、
光がなければ影は生まれない。
どちらも絶対に存るという豊かさに、
胸を張って孤独でいよう^^
そして、朔太郎の詩集を読んでみようと思います。
ひとりでじっくり深く潜り込んでもよし、
誰かと語らってもよし。
ちょっとビターな展覧会なのかな、と感じました。
でもすごく面白かったです。
月に吠えよ、萩原朔太郎展(世田谷文学館)は
2023年2月5日まで開催予定です。
よかったら観に行ってみて下さいね。
ではでは、また!!
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